空々と漠々 くうくうとばくばく

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城島と槙野6

 

「なあ。子供って生まれるのいつ?」
 
運転する城島の隣りで槙野が言う。
 
「ん?ああ今3ヶ月だから春だな春」
「いいねえ。名前つけさせてよ」
「はあ~?なんでだよ」
「生まれるのって男?女?まだわかんない?」
「あー女。娘だよ。絶対カワイイ」
 
早くも親バカを発揮してか城島の頬が緩んだ。
 
「女か……」
 
槙野が黙りこんだ。
 
信号待ちで車を停めると槙野を見て城島が言った。
 
「オマエ……なんだその不穏な沈黙は。あ~言っとくけど娘に手を出したらブッ殺すからな」
「いやいや名前を。それにオレ女は……そっかその手があったか。オマエが義理のお父さんってのもいいな」
「ふっざけんな。同い年の婿なんていらねえぞコラ」
「でもな、オレ女イけるかな」
「そうだろそうだろ」
「いや、オマエの遺伝子入ってるならイけるか。頑張れば」
「てめえマジふざけんな~頑張るな」
「ハハハハ。いや頑張る頑張る。ほら城島、信号青」
 
 
槙野は数カ月ぶり、いや何年ぶりかに心の底から笑った。
そして思った。
 
バカ話してオレたちはこれからも続く。
こんなことになるとは思わなかったけど。
 
たとえ友達としてしか許されないとしても、オレはこの男のそばを離れられない。
そう思い知った。
 
オレ達の先は長い。
オレがこの想いを今世で昇華すれば来世まで続くらしいから。
来世を夢見て、オレは死ぬまでこの男のそばで生き続けることになるだろう。
 
窓の外を見れば青空に入道雲がもくもくと浮かんでいる。
今日も一日暑いだろう。
 
真島くん、地獄の先には思ってもみなかったちょっとした天国があったよ。
またいつか君と出会えたらいいな。
その時は笑って話をしよう。
 
 
槙野は心で少年に話しかけ微笑んだ。
 
 
~終~
 
 
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