空々と漠々 くうくうとばくばく

BL小説ブログです。。。

ナツノヒカリ 50

 

「おじゃましま~す」
「どうぞ~」
 
ワイワイガヤガヤ。
 
大人数がオレんちの居間に流れこむ。
 
 
ちょくちょく遊びに来ている男子たちは自分の家みたいな感じだけど女子たちはキョロキョロ。
 
 
「真島くん、お部屋キレイだね」
 
結衣ちゃんが言う。
 
「そう?いつもこんなんだけど」
「お母さんキレイ好きなんだね」
「あ~いつもなんか、せっせとやってる」
「節子だけに?」
「つまんねえよ佐藤。つうかオマエ、お菓子フライング」
「うっせ」
 
買ってきたスナック菓子の袋を開けてボリボリ食べていた佐藤がオレの口にも突っこむ。
 
「つうか結衣ちゃん、結婚でもしたら大変なんじゃない。『んま~結衣さん、窓枠にホコリが~』みたいな」
「うちの母ちゃん女の子好きだから大丈夫。それに同居とかしねえし」
「しねえの?」
「結婚したら二人でラブラブイチャイチャしてえじゃん。だから、安心してね。結衣ちゃん」
 
と、結衣ちゃんのほっぺをつつく。
 
「う……うん……」
 
結衣ちゃんがまた赤くなった。
ウブイ……。
この赤くなるの見たくてチョッカイ出してるとこあるな、オレ。
 
 
「台所広ーい。キレー。マジー、お母さん料理上手でしょ」
「え~まあ、まずくはないけど」
「絶対美味しいはず。この台所は料理好きな人の台所。ね、桜子」
 
桜子ちゃんがコクンとうなづいた。
 
「あ~真島の母ちゃんの料理上手いよ。オレぶっちゃけミートソースとかうちのより好き。な、中田」
「あ~オレはカレーが好き。真島、オマエのパソコン、二階から持ってきていい?」
「いいけど。何?」
「あー、BGM作ってきた。中田ズセレクト」
 
中田は背負っていたリュックから小さなスピーカーを出した。
 
「おーいいねえ~」
 
 
 
「は~い。じゃあエプロン持ってきたからどうぞ~」
 
 
杏子ちゃんがテーブルにエプロンを広げる。
 
「おっ!エプロン!桜子ちゃ~ん。写真撮らせて~」
 
メイド喫茶の店員みたいになった桜子ちゃんがアニメ声で答える。
 
「おかえりなさいませ。ご主人様」
「萌え~。オレこれでメシ三杯イケるわ。おっ、明日美ちゃん結衣ちゃんもカワイ~。あっ杏子ちゃんも」
「オマケみたいに言うなよサティ」
「ワリぃワリぃ。いや、馴染みすぎてて貫禄が……」
「何を~」
「イタイイタイ」
 
杏子ちゃんにヘッドロックをくらう佐藤。
 
「結衣ちゃん、いっしょに写真撮ろう」
「うん」
 
オレは結衣ちゃんを後ろからハグしてスマホのシャッターを押す。
 
 
灰谷が何をしているかと言えば、はしゃぐオレと佐藤を尻目に買ってきた食材をビニール袋からテーブルに出し、飲み物を冷蔵庫にしまっている。
つくづくマメな男だよ。
明日美ちゃんのエプロン姿も抜群にカワイイのに。
 
 
「明日美ちゃん結衣ちゃん、イエー」
 
二人の姿を写す。
 
「あ、カーワイ~。見ろよ灰谷。カワイイぜ、オレらの彼女」
 
スマホの画面を灰谷の顔に近づける。
 
「ああ」
 
ろくに見もしないで灰谷が答える。
なんなのコイツ。
ポーカーフェイス~。
 
んでも、そういうとこが……もう……本当に……ってオレ!
 
 
「マジー、包丁とか色々借りていい?」
「いいよ~。どこでも開けて、なんでも好きに使っていいって。んで、米はたくさん炊いてあるってさ」
「ホント?お母さん気が利く~。したらみんな手を洗って~。包丁持てる人は野菜どんどん切っちゃって~あたし肉盛りつけるから。マジー、肉と野菜盛る大皿とかある?」
「大皿~どこだろ」
「あとは取り皿。あと人数分のグラス。割り箸は持ってきたから。あ、あとホットプレート」
「あ、ホットプレートは用意してある。え~と大皿大皿」
 
食器棚を引っ掻き回していたら、こんな会話が聞こえてきた。
 
「明日美、お野菜洗ったり皮向いたりしてくれる。包丁ダメでしょ?」
「うん。ありがとう結衣」
「あれ?どしたの明日美ちゃん、包丁ダメ?」
 
佐藤がズケズケと聞く。
 
「うん」
明日美んち、手を怪我したら大変だからって、さわらせて貰えないんだよね」
「どうせ結婚したら、イヤでも覚えるんだからそれまではいいってお父さんが」
「お嬢!」
「そんなんじゃないけど」
「でも結婚したら大変だな灰谷~」
 
佐藤の何気ない言葉だったけれど明日美ちゃんの顔が少しだけ曇った。
 
「おい、佐藤!言いすぎ。オマエだってダメだろ。まあオレもだけど」

一応フォローする。
 
「あっ、ゴメン」
「ううん。そうだよね。ちょっと位できた方がいいよね」
 
 
「オレ、やるわ」
 
そう呟いて灰谷は手を洗うと包丁を手に取り、玉ねぎを掴むと上下を切り落として包丁を使って皮を剥いた。
おお~シェフとかが剥くみたい。

「輪切りでいいよね」
「うん。いいよハイター」
 
灰谷は次々と手際よく玉ねぎの皮をむいて刻んだ。
女子たちが大注目。
 
「灰谷くんすごーい」
「灰谷スゲエな。こりゃモテるわ」
「う~ん。ハイター、日頃からやってるね。野菜の切り方、厚さも的確だし手際がいい」
 
杏子ちゃんからもお褒めの言葉。
そうだよな。自炊してるんだもんな灰谷。
 
「今度うちの食堂手伝いに来ない?」
「時給いくら?」
「三食昼寝付きで無給」
「行かねえ」
「だよね~。そうだハイター、せっかくだから明日美ちゃんに教えてあげたら?」
「ちょっとやってみる?」
「うん」
 
明日美ちゃんが嬉しそうな顔をする。
 
「ケガするからしっかり持って。持ち方はこう。うん。刃に人差し指添えて。で、切るとき左手はネコ」
「ネコ?」
「こう。ネコみたいに丸める」
「うん」
「じゃ、ナス切ろうか。まずヘタを落として……」
 
 
丁寧にやさしく教える灰谷。
オレたちと話す時とは違う。
柔らかな声のトーン。
こんな風にしゃべるんだ灰谷。
明日美ちゃんには、こんなに優しく……。
 
 
「できる人がやればいいのよ、こういうもんは。そんで、できない人は、できる事をすればいいの」
 
杏子ちゃんがサバサバと言う。
 
「んで、マジーお皿あった?」
「あ?ああ」
 
オレは目についた大きめな皿を出す。
 
「こんなんでいい?」
「ありがとう。そしたらママになんでもやってもらって、包丁も使えないボクちんたちは、ジャマにならない居間のほうでこれ、すりおろして」
 
玉ねぎとりんごとにんにく、すりおろし機を渡される。
 
「ほ~い」
 
佐藤が元気に返事をした。
 
ひどい言われようだと思うけど事実なので何も言えない佐藤とオレ。
そうだな、できる事をしよう。
 
 
「これって何に使うの?杏子ちゃん」
「タレだよ~。手作りするとおいしいんだよ」
 
へえ~さすが食堂の娘。
 
オレと佐藤はガシガシガシガシ。
 
「腕痛いわ」
「真島の細腕繁盛記」
「何それ?」
 
 
パソコン持って中田が二階から降りてきた。
 
「中田、お前も手伝えよ。つうか替わって」
「おう」
「祐介、手、洗ってよ」
 
杏子ちゃんの声が飛ぶ。
 
「わかってるって」
 
あ~、これシンドイ。
玉ねぎキツイ。
 
「ほれ、貸してみろ」
 
中田が替わってくれた。
ガシガシガシガシ。
中田の力技。
 
「うお~。指先にんにくクセえ~」
「どれ?あっホントだ。オレ、それヤだわ」
「真島、オレと替わって~」
「やだよ佐藤」
「ケチ」
「あ~どっちが早く終わるかな。やっぱ中田か。中田だろうな~」
「何を~。だりゃあっ。ふんっ!」
 
佐藤が突然猛ダッシュ
 
「おっ、負けるかこら」
 
争って中田もダッシュ
 
 
遊びにすれば作業は早く終る。
って誰か言ってなかったっけ。
でも一番賢いのは競わせて手を汚さない策士のオレだけどな。
ククク。
 
 
「できたよ~」
「ありがとーマジー
「なんだよ真島、やったのほとんどオレと中田じゃん」
「だな~」
 
杏子ちゃんと桜子ちゃん二人並んで作業する姿はさすが姉妹。
なんとも手際がいい。
杏子ちゃんがチャッチャと肉と野菜をウマそうに皿に盛りつけて行く。
 
 
「桜子ちゃん。何作ってるの?」
 
藤が桜子ちゃんの後ろから手元をのぞきこむ。
 
「レタスとりんごとセロリのサラダ」
「いいねえ~。そういえば桜子ちゃんの手料理初めてだオレ」
「佐藤くん。味見して」
「あ~ん。ウマイ!桜子ちゃん天才!」
 
佐藤もラブラブな。
 
それにしても……。
 
おっかなビックリ、野菜を切ってる明日美ちゃんと自分がやった方が早いだろうに手を出さずに見守ってる灰谷。
オレなんかジレったくて多分、見てらんねーな。
こういうとこ灰谷は気が長いというか。
そう、相手のためになるのなら、見守ることができるやつなんだ。
って、ええい~。
 
 
「結衣ちゃ~ん」
 
オレは野菜を切っている結衣ちゃんの後ろから抱きつく。
 
「キャッ」
「マジー、包丁使ってる時はイチャイチャしない!ケガするよ」
「何かっちゃあベタつくな真島は」
「だって、くっつきてえんだもん」
 
 
一瞬、灰谷と目が合ったけど気にしない。
 
「指、切らないでね。ちっちゃくてカワイイこの指」
 
結衣ちゃんの指をもて遊ぶ。
 
「大丈夫」
「ならいいけど。家庭的だね~結衣ちゃんは。オレ、料理出来る人好きだよ。今度なんか作って欲しいな。オレだけのために」
「いいよ~。何が好き?」
「う~ん。あっ、オレあれ好き。トマトとナスとベーコンのパスタ」
「いいよ」
「あっ、大葉を多めに上にかけてね」
「大葉?わかった」
 
あっ、今の言い方だと料理ができない明日美ちゃんへのイヤミになっちゃったか?と思ったけど、明日美ちゃんは野菜を切るのに精一杯で聞いてなかったようだ。
 
トマトとナスとベーコンのパスタは灰谷の得意料理だ。
これだけは母ちゃんが作るより美味しい。
オレのこの煽りが灰谷にもわかったのだろう。
眉間にほんの少しシワが寄った……ようにも見えた。
まあ、気のせいかもしれない。
 
 
「オレだって、くっつきてえよ~」
 
桜子ちゃんのまわりをウロウロしていた佐藤がスネたように言う。
 
「あ~?なんか言ったか佐藤」
 
オレのパソコンでカチャカチャやっていた中田の声が飛ぶ。
 
「中田の過保護がヒドイ」
「悪い虫は追っ払わねえと」
「虫って~」
「ごめん真島、パソコンのキーボードニンニク臭いかも」
「え~。マジで~」
「ほいじゃあミュージックスタート」
 
 
中田が選んできた音楽が流れる。
レゲエだった。
途端に南国感。
 
「あ~もうハラ減ったよ~」
「もう少しでできるから、こっちはいいから男子たちはテーブルセッティングして~。サティ、ジャマジャマ」
「ほ~い」
 
腕を組んで部屋を眺めていた中田が言う。
 
「なあ、この台所のテーブルを居間に運んで窓開けて、立って食べたほうがよくねえ?」
「あ~そうかも~でもソファがジャマじゃね?」
「頭を使え佐藤、部屋の隅に動かせばいいんだよ」
「つうか暑くねえ?」
「いや、それも醍醐味っしょ。たぶん煙すげーし」
「運ぼー運ぼー灰谷ぃ~こっち手伝って~」
 
男子四人でエッチラホッチラ家具移動。
 
「つうかこのホットプレートに八人って鉄板狭くねえ?」
「あ~じゃあ、カセットコンロ出して鉄板のせて~」
 
              
そんなことやってるうちに準備万端整って肉も野菜もジュージューいい始めた。
 
 
 
 
 
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