空々と漠々 くうくうとばくばく

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ナツノヒカリ 47

 

一度してからは会う度に結衣ちゃんと寝た。
 
デートして、最後はセックス。
その流れに持っていくのに最初は少し工夫がいった。
 
女は(っていうかこの場合は結衣ちゃんだけど)別にセックスなしでもキスとかハグのスキンシップでもかなり満たされるみたいだ。
 
まあ、オレもいいっちゃいいんだけど。
でも、どうせなら色んなことしてみたいってのはあって。
性的な欲求。
自分が女でどれくらい出来るのかという興味。
 
デートは当たり前として、スキンシップというか、「こんなに求められている。好きだからしてあげたい」と思わせる感を演出するというか。
幸い、結衣ちゃんの方がオレの事を好きだから、そんなに難しくなかった。
 
 
 
結衣ちゃんを後ろから突く。
 
「あっ……んっ……んっ……真島くん恥ずかしい……なんか、動物になったみたい……」
 
結衣ちゃんはそう言って顔を真っ赤にする。
 
「そう?でも人間だって動物じゃん」
「そうだけど……あっ……」
「ここ?いい?」
「あっ……あっ……イヤ……」
「気持ちいい?気持よくて恥ずかしい?」
「……うん……んっ……んっ」
「恥ずかしがってる結衣ちゃん見てオレ、たまんないよ。好きだよ結衣ちゃん」
 
 
エロオヤジか!
オレは心でツッコミを入れる。
でも好きだよの言葉と舌を入れたキスで結衣ちゃんはトロケそうな顔をする。
 
好きはカワイイに続くマジックワードだ。
 
……好きじゃないから全然言える。
オレの好きは軽くて安い。
 
でも、結衣ちゃんは気づかない。
 
 
 
 
「そこ……ん……うまい……いい……いいよ…」
 
オレの股間に顔を埋める結衣ちゃんの髪を撫でる。
 
 
はじめは恥ずかしがっていた結衣ちゃんだったけど、その実、好奇心旺盛で積極的だった。
フェラにも挑戦してくれる。
まあオレがこの前、同じようなことしたから、そのお返しって事でもあるんだろうけど。
 
 
……いや、わかってる。
オレの事が好きだから。オレが喜ぶだろうときっと必死でしてくれるんだと思う。
サイテーなのはオレだ。
 
 
「結衣ちゃん、もう、いいよ」
 
え?もう?みたいな顔で見上げる結衣ちゃんの顔はカワイかった。
 
ゴムの袋を破り、装着する。
結衣ちゃんがオレの股間を凝視する。
 
 
「何?」
「ん?すごいなあって。角度が変わるから。神様、よく作ったよね」
「だね」
 
 
カワイイことを言う結衣ちゃんを押し倒して挿入した。
 
 
ホント、凸とか凹とか、男と女とか。
よく作ったよね神様。
ついでに、本当に好きな相手としかできないように作ってくれたらよかったのにね。
それじゃあ、繁殖しないか。
もともと生殖行為だからなセックスって。

 
「あっ……あ……あ……真島く……」
 
しがみついてくる結衣ちゃんの中でオレは抜き挿しをくり返す。
 
「好きだよ」
 
耳元でささやいたり、小さくキスを落としたりしながら。
 
味わう。
そのやわらかいカラダを。
女の高く甘い声を。
 
うごめいて絡みつくレースとリボンの奥を。
カエルとカタツムリと仔犬のシッポをおっ勃てて。
 
 
できるんじゃんオレ。女とも。
ゲイってわけでもないのかな。
つうか、カラダはちゃんとできるんだわ。
 
でも……足りない。
城島さんに抱かれた時のような、あの、相手にすべてを投げ出して、さらけ出して得られるような快感はなかった。
 
 
男に抱かれるのと女を抱くのはまるで違う。
 
 
結衣ちゃんと寝て改めてわかったことがある。
今までは自分の本当の欲望に目を逸らしていたけど。
 
 
オレは灰谷に抱かれたい。
 
そしてカラダごと心ごとオレのものにしたい。
 
認めたからって何がどうなるわけでもないけど。
 
 
でも、それはムリだから。
こうやって何かで埋めていくしかない。
女と寝る。
これは灰谷もしていることなんだ。
 
言い訳か。言い訳だ。
 
 
「あ……イク……結衣ちゃ……」
「あっ…あっ……真島く……真島く……好き……好きっ……」
「オレも……んっ……」
 
 
またヨゴレて行くな。
ヨゴレてヨゴレてヨゴレて行く。
 
そして結衣ちゃんをヨゴしてヨゴしてヨゴして行く。
 
 
 
 
窓のない、風の通らないホテルの部屋で天井を見つめながらオレはあの夏を思い出す。
 
 
あの日、チャリで灰谷と出かけた中学生のあの日、灰谷は覚えていなかったけど、帰り道でケンカになった。
原因はたしか、なけなしのお金で買ったジュースをオレが飲みきったとかなんとかそんなので。
灰谷がキレたんだった。
暑くて疲れて家まではまだ遠くて。
灰谷は怒って口もきかないし。
 
夕方だってのにまだ明るくて蒸し暑くって。
 
長い上り坂にさしかかり、並んで自転車を押しながら、泣きたくなるような疲労感の中で突然オレは思ったんだ。
 
 
灰谷と二人、こうしている今が幸せだと。
こうやっていつまでも、こいつのそばにいたいと。
 
 
「灰谷……オレな」
 
オレは灰谷に声をかけた。
 
「なんだよ」
 
灰谷はオレを見た。
 
「(オレ、オマエと……)」
 
灰谷の顔を見たらなんだか胸がいっぱいになって、何も言えなくなってしまった。
 
「なんでもない。もうちょっとだぜ。がんばろう」
 
そう言ってごまかした。
 
 
 
あの日のオレを、オレは……想う。
あのナツノヒカリをオレは……想う。
灰谷を……想う。
 
 
オレのいままで生きてきた記憶や思い出のそのどれもが灰谷と結びついていて、だからこんなにも灰谷の事を想ってしまうのだろう。
 
けれど今年の夏、オレたちはバラバラで。
だからオレの心はネジ曲がって、こんなこと――結衣ちゃんと寝る――とかをしてしまうのだろう……。
 
 
言い訳だ。
オレの都合のいい言い訳だった。
 
行き場のない想いはどこに行くんだろう。
 
結衣ちゃんとカラダを重ねれば重ねるほど淋しくてしょうがなくなった。
 
城島さんの時もそうだったけど、オレにとってセックスは少しの快楽とその後に淋しさを感じる行為だった。
 
 
「真島くん?」
 
シャワーから戻ってきた結衣ちゃんがオレの顔をのぞきこむ。
 
「ん?」
「ううん。泣いてるのかと思った」
「泣いてないよ」
「そう?」
「うん」
 
オレの変化に敏感な結衣ちゃん。
手を引いて胸に抱き寄せる。
 
ごめんね。好きじゃなくて。結衣ちゃんの好きと違くて。
せめてもの罪滅ぼしに、こうして抱きしめる。
スベスベして小さくてやわらかい抱き枕。
 
「落ち着く」
 
結衣ちゃんはオレの胸に頬を寄せる。
 
そうだね。
人のカラダって、心臓の音って落ちつくよね。
 
 
結衣ちゃんがオレの耳たぶを撫でた。
 
「これ、カッコイイね」
 
クロムハーツのピアス。
バイトして初給料で買ったやつ。
灰谷とデザイン違い。
 
「気に入った?」
「うん」
 
オレは右耳のピアスを外して結衣ちゃんの耳につける。
 
「え?いいの!」
「うん」
「ありがとう真島くん。大切にするね」
「うん」
 
多分こんなもんじゃ償いきれないほどヒドイことしてる……。
ごめんな。
 
オレは心でささやいた。
 
 
 
 
 
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