空々と漠々 くうくうとばくばく

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アキノワルツ 第13話 一触触発?

真島がいなくなると部屋にピンと張り詰めた空気が流れた。

パリパリパリパリと灰谷がレタスやキュウリを噛む音だけが響く。
しばらくして友樹が口を開いた。

「言わなかったでしょ?」

「……」

灰谷はバリバリと野菜をかみ砕いた。

バリバリバリバリ。


「灰谷先輩、あの時ボクに言いましたよね」

あの時……。
真島についての悪質な噂を聞いた時の事か。

「『真島がそういうヤツかどうか、一緒に働いて自分の目で確かめてくれ。あいつ、いいヤツだよ。オレが保証するっ』って」

よく覚えてるな。

「マコ先輩はステキな人ですよ。灰谷先輩の言葉が、一緒にいてよくわかりました。ボク、大好きだなあ」


バリバリバリ。

つうか、なんなんだ?これ。


灰谷は野菜の皿を空っぽにすると友樹を見た。
友樹はその視線を受け止め、じっと見つめ返した。


「(オマエさ……)」

灰谷が口を開きかけたその時……。


「灰谷~」と真島が戻ってきた。

「母ちゃんがちょっと相談したいってよ」
「相談?」
「ああ、ほら食事会のこと……ってオマエら。……なんかあった?」

二人の微妙な空気を感じ取ったのか真島が言った。


「別に」淡々と灰谷が返すと「何もないですよマコ先輩。マコ先輩がカワイイって話をしてたんです。ね?」と友樹は明るい声で灰谷に笑いかけた。

「つうか友樹、オマエ、マコとカワイイ禁止な」
「え~~~。っていうか食事会ってなんですか?」
「ああ。灰谷の母ちゃんの婚……あ~…うん」

絡んだ諸事情(灰谷の母の婚約、しかも同性婚、そのお披露目も兼ねた食事会)を考えたのだろう。
真島が口を濁すと何も言わずにふらりと立ち上がり灰谷は出ていった。


「ワリぃ友樹、すぐ終わるから、ちょっと食って待ってて」
「はい。ごゆっくりどうぞ」

後を追う真島に友樹はニッコリ微笑んだ。


ドアが閉まり一人になった途端、友樹の笑顔はすっと消えた。
もらったCDを手に取り一瞥すると、つまらなそうにポンと放り投げた。

そして「食事会ねえ~。なんだろ」とつぶやいた。

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