空々と漠々 くうくうとばくばく

BL小説ブログです。。。

ナツノヒカリ 99

 

……課題が終わった。
 
夏休み最終日の明け方に。
 
最後の方はサトナカハイに手伝ってもらって、どうにかこうにか無理矢理のやりで。
 
そのまま寝オチて、目覚めれば午後。
お昼もとっくに過ぎていた。
 
 
「さーこれで自由だぞ真島」
 
中田がオレの肩を叩く。
 
「おう。サンキュー。みなさんのお陰です」
「良かったな真島くん。サトナカハイに、特に佐藤によ~くタカユキするようにな」
「ウッス!」
「今日、これからどうしよっか?」
 
灰谷が言う。
 
「プール。プール行こうぜ。で、カラオケ。カラオケ行こうよ」
 
佐藤が提案する。
 
「つうか腹減らね、その前に何か食わない?」
 
なんて話していたら中田のスマホが鳴った。
 
「もしもし……ああ……いるけど……終わったよ……何?……ホント?聞いてみるわ」
「どした中田」
「兄貴からでさ、みんなに焼き肉オゴってくれるって言ってるけど」
「焼き肉!」
 
腹ペコのオレたちは色めきだった。
 
「どうする?」
「行く行く。焼き肉焼き肉~」
「プールとカラオケは?みんなでガツンと遊ぶんじゃねえの?」
「いいよな灰谷。ガツンは焼き肉食べてからで」
「おう。いいんじゃね?」
「焼き肉~」
「焼き肉~」
 
オレと佐藤はハイタッチした。
 
 
中田の兄貴が車で迎えに来てくれた。
 
久しぶりに会った中田の兄貴は相変わらず迫力満点でカッコよかった。
背の高い灰谷、中田(弟)よりも背が高く、バキバキに鍛えたカラダ。
中田(弟)と同じ細マッチョ。
現役じゃないのににじみ出るヤンキー感。
さすが伝説の不良。
 
兄貴は見送りに出て来た母ちゃんに「息子さんたちをお借りします」なんてきちんと挨拶をした。
 
「信、中田くんのお兄さんカッコいい~」
 
なんて母ちゃんは目をハートマークにさせていた。
母ちゃんの世代はヤンキー弱いよね。
知らないけど。
 
 
 
「ほいじゃみんな、お疲れ」
「お疲れ様でーす」
 
中田(兄)はビール、オレたちはジュースで乾杯した。
 
「オラ、ガキども食え食え」
 
腹ペコのオレたちは肉に食らいつく。
 
「兄貴~最高!」
「ウマイ。ウマイっす」
「ごちそうさまです」
「っす」
「たっぷり食え。何せ食べ放題だからな」
 
オレ達は腹がはちきれんばかりに食べて食べまくった。
 
 
焼肉の後、腹ごなしも兼ねてみんなでバイクを見に行くことになった。
中田(兄)が勤める工場の倉庫へ。
 
「うお~ジョーカー。本物だ~」
「え~カッコいいじゃん真島」
「おう」
 
写真じゃなくて実際に見て触ったジョーカーはカッコ良かった。
 
ブラックとシルバー。
オレと灰谷の。
これに乗って灰谷とツーリング。
想像するだけでウキウキする。
 
「灰谷、ありがとな」
「おう」
「それ見つけるの大変だったぞ。一日も早くとか言うからさ」
「すいません。ありがとうございます」
 
灰谷が中田(兄)に頭を下げた。
 
「ありがとうございました」
 
オレも頭を下げる。
 
「いいってオマエら」
 
「おっ。メットカッコいい~シャアじゃん。こっちザク」
 
アニオタの佐藤がヘルメットに食いついた。
 
「お、わかるか佐藤。いいだろう」
「兄貴ぃ~センスいいっすね~」
「被ってみ?そうだ、オマエらみんないっしょに写真撮ってやるよ」
 
オレ達はカッコつけて記念写真を撮った。
 
 
「そこら走ってみるか?」
 
灰谷と二人、練習がてら工場の駐車場をぶんぶん走ってみた。
 
初めはこわごわだったけど、そのうちに慣れてガンガン飛ばしまくった。
 
カーたまんねえ~。
このスピード感。
チャリとは違う。
楽しい~。
 
さんざん乗り回して、そろそろ中田(兄)と別れてプールに行かないと時間がなくなるなと思っていた。
みんな同じ事を思っているらしく、別れを告げるタイミングを探してると、中田(兄)が宣言した。
 
 
「ウーイ。それじゃあみんな、第二回長渕ナイトこれより開催」
 
オレ達は固まった。
 
え?え?
 
「オマエら、タダメシ食ってそのまんま帰れるとは思ってねえだろうな」
 
よりによって今日?今から?みんなでガツンと遊ぶためにオレ達、必死で課題終わらせたのに?とも言えず、マジハイサトの視線は中田(弟)に集まった。
 
こうなることを予想していたのか中田(弟)は菩薩のように微笑んだ。
 
 
 
そして……。
カラオケボックスに車で連行され、始まった長渕ナイト。
 
「♪死んじまいたいほどの 苦しみ悲しみ」
「剛~」
「剛~」
「♪そんなものの一つや二つ~」
「剛~」
「剛~」
 
予習した曲バッチリだった。
 
「♪勇次~」
「オイ!」
「♪あの時の~」
「オイ!」
「♪エネルギッシュなお前が」
「オイ!」
「♪欲しい~」
「オイ!オイ!オイオイ!」
 
オレたちは拳を振り上げる。
肩を組んで揺れて合唱する。
 
いつかは終わる。
いつかは終わる。
 
いつかは……。
いつかは……いつ?
 
興が乗った中田(兄)はマイクを離さず……気がつけば夜……。
 
前回と同じ、兄貴の声が枯れたところでやっと、やっとお開きになった。
 
オマエら全員、オレのベストファンだよ、と中田(兄)はオレたち全員に小遣いをくれた。
 
「ガキども最高だったぞ。またよろしく頼むわ。次回は矢沢でよろしく。シェギナベイベー」
 
ご機嫌で帰っていった。
 
 
ガックシ。
中田(兄)がいなくなった途端、カラオケボックスの前でオレ達は座りこんだ。
 
サトナカマジハイは戦った。
そう。
戦いきった。
義理を果たしたのだった。
 
 
「は……腹減った……」
 
佐藤が言った。
みんな同感だった。
 
あんなに焼き肉食べたのに。
体力消費ハンパなし。
オレ達はラーメン屋に飛びこむと黙々とラーメンをすすった。
 
時間的にプールはアウトだし、カラオケは……もういい。
明日は始業式で早いので家に帰るしかなかった。
 
ブラブラ歩きながらオレんちに向かう。
みんな荷物置きっぱなしだったから。
 
「疲れた~」
「ああ」
「暑いな~」
「おう」
 
怒涛の時間にオレたちは無口になっていた。
 
「なんかごめんな、ウチの兄貴が」
 
中田が言った。
 
「いや、元はと言えばオレがムリ言ってバイク探してもらったから」
 
灰谷が言った。
 
「いや、元々はと言えばオレがあんなナイトを提案したばかりに」
 
佐藤が言った。
 
「いや、オレが一人旅なんか行って課題バックレなければ」
 
オレが言った。
 
 
アハハハハ。
 
オレたちは力なく笑った。
 
 
「しかし暑っちいな~。プール行きたかったな」
 
佐藤の一言でオレはヒラめいた。
 
「泳ごうぜ」
「は?もう終わってるだろ」
「いや、いい所がある」
 
 
 
「こっちこっち」
 
オレはみんなを手招きする。
 
そこは灰谷とオレが通っていた中学校のプールだった。
 
高いフェンスにオレはよじ登る。
 
「真島、危ねえって」
「大丈夫だって」
 
灰谷が隣りを登ってきた。
中田も続いた。
 
「んもう~」
 
渋々佐藤も続いた。
 
「一番上有刺鉄線あるから気をつけろよ」
 
オレたちはなんとかフェンスを乗り越えた。
 
あの辺にねえかなあ~。
 
オレは配電盤を探す。
ラッキーな事にカギは掛かっていなかった。
 
パチン。パチン。
 
スイッチを上げると、照明がついてプールが照らし出された。
二十五メートルプールが青く光っていた。
 
「うお~」
 
テンションの上がった佐藤がTシャツとジーパンを脱ぎ捨てて真っ先に飛びこんだ。
 
水から顔を出して笑う。
 
「最高~!フー!」
 
佐藤に続けとばかりにオレも服を脱ぎ捨てると助走をつけて、えいやっと飛んだ。
 
ふわりと浮いて水の中にジャポーン。
水の中気持ちイイ~。
そのままスイスイ泳いで佐藤とハイタッチした。
 
中田が自慢の細マッチョを見せびらかすように謎のポージングをして飛びこんだ。
 
泳いで来た中田ともハイタッチする。
 
灰谷はと見れば脱いだ服をきちんと折りたたんで水のかからない脇に置いている所だった。
 
A型……。
 
そして、行きまーすとでいうように右手を高く上げると飛びこんだ。
 
プールの真ん中に集まったオレたちは輪になって肩を組み笑った。
 
「サトナカマジハイ。イエーイ」
 
バシャッ。
オレは佐藤に水をかける。
 
「やめろ真島」
「オラ、佐藤」
 
プールの中で大ハシャギ。
オレ達はまるで小学生みたいに暴れまくった。
 
 
中田が佐藤のパンツを脱がしてプールサイドに投げる。
佐藤が前を押さえながらケツ丸出しで取りに行く。
それを見てゲラゲラ笑った。
 
 
さんざん遊び疲れてオレたちは四人並んでプカプカ浮いていた。
 
空にはチカチカと星、そして月。
 
カラダに水が心地良い。
このまま眠っちゃいたいぐらいだった。
 
「あ~なんか楽しいな」
 
佐藤が言った。
 
そう、ホント、楽しかった。
 
みんなそう思っているのがわかった。
 
オレ達はしばらくそうしてプカプカと浮かんでいた。
 
 
 
家の前でサトナカハイを見送る。
 
「ホントに途中まで送って行かなくていいの?交差点の所まで行くぜオレ」
「いいって。真島が一番寝てないだろ」
「いやでも、オレのせいでみんな……」
「気にすんな真島。オレたちの仲だろ」
「中田」
「そうよダーリン。明日からタカユキしてくれればいいわ」
「佐藤…。でもケツは掘らせないわよ」
「掘るか!あ……」
「なんだよ佐藤」
「いやあ~あのな、真島、一つ聞いていい?」
 
モジモジしながら佐藤が言った。
 
「いいよ。何?」
「あのさ……あのね、ケツってイイの?」
 
「佐藤~」
 
灰谷がヘッドロックした。
 
「イタイ。イタイ。灰谷ギブギブ」
「オマエ~」
「あ~いいよ。いいから灰谷。離してやれよ」
 
ゲフゲフゲフ。
佐藤が咳きこんだ。
 
灰谷、力強すぎ。
 
「佐藤、そういうデリケートな事はさ。面と向かって聞いちゃダメ」
 
中田が佐藤を諭す。
 
「いやあ~単純な興味だって~」
「オマエなー」
 
灰谷がまた締めようとするから佐藤がオレの後ろに隠れた。
 
「いいっていいって」
 
オレは佐藤の耳に小さな声でささやく。
 
「メッチャ・イイ」
 
佐藤が鼻を手で覆った。
 
「真島、鼻血ブー」
 
「お?なんだ?佐藤だけズルいわ」
「何?中田も聞きたいの?いいよ」
 
オレは中田を手招きすると、ささやいた。
 
「未知の扉、開いちゃうぜ」
 
中田が自分の頬に手を当てて大きく口を開けた。
 
「キャー、真島くんったらヤらしい~」
「中田キモいわ」
「うるせえよ佐藤」
 
中田が佐藤にヘッドロック
 
「イタイイタイ。灰谷は~?」
「は?オレはいいよ」
「なんでだよ。聞いとけよ」
「いいって」
「なんでだよ。聞いとけよ」
「中田までなんでだよ」
 
サトナカは灰谷を見てニヤニヤ笑った。
 
「灰谷ビビってる~」
「灰谷ビビってる~」
「ビビってねえわ」
「じゃあ聞けよ」
「いいよ」
「はい。灰谷ビビってる~」
「ビビってない」
「んじゃ、真島、どうぞ」
 
灰谷が憮然とした顔をしている。
オレは灰谷を手招きする。
灰谷は渋々といった感じでオレの口元に耳を寄せる。
オレは言った。
 
「オレの気持ちにオマエの気持ちが追いついたら、ヤろうぜケン」
 
灰谷が固まった。
 
「あ、灰谷が固まってる」
「何言ったんだよ真島」
「別に~オマエらと同じだよ」
「マジで~?」
 
「んじゃ真島、明日いつもの時間な!」
 
灰谷が突然デカイ声で言った。
 
「ああ。つーか声デケエし」
「つうか灰谷、なんでそんなに怒ってんの?」
「はあ~佐藤、怒ってねえわ!」
「灰谷くん、純情ね」
「はあ~中田、純情じゃねえわ!」
 
怒ってるというより、テレてるな、灰谷。
オレにはわかった。
 
 
「んじゃみんな、また明日な」
「おう。おやすみダーリン」
「おやすみ真島~」
「真島、寝坊すんなよ!」
「おう」
 
「だから、なんで灰谷怒ってんの?」
「怒ってねえわ佐藤」
 
サトナカハイが帰って行った。
 
みんなでガツンとは遊べなかったけど。
楽しい夏休みの最後の一日だった。
 
 
 
 
 
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