空々と漠々 くうくうとばくばく

BL小説ブログです。。。

ナツノヒカリ 95

 

久しぶりに灰谷と随分長い事、話しこんでしまった。
 
「もう寝ないと明日起きれねえな。真島、オマエ疲れたろ?」
「いや、オレは結構ダラダラしてたから」
「そっか。オレはもう、ファミレスで課題やんのに頭使って、オマエ探すのにチャリダッシュして。あー」
 
灰谷が布団の上に大の字になった。
 
「ワリぃ」
「ワリぃと思うんなら、課題ダッシュな」
「ん?ああ」
「まあ大体終わってるから、オマエはほぼ写すだけだけど。かなり量あるからな。手が死ぬぞ」
「うん。あ、オレ、一応サトナカにLINEしとくわ」
「おう」
 
オレはサトナカにLINEを送ると、改めて灰谷からのメッセージに目を通した。
 
 
「つうかこれなんだよ」
「何?」
「『月はキレイだ。ドッグはウマイ』って」
「ああ。あれ、やっぱ真島だろ?」
「あ?」
「公園のベンチでアメリカンドッグ食ってたらさ、誰かが空を見ろって話しかけてるなと思ってさ」
 
ズキュン。
 
「見上げたらキレイな月でさ。ドッグはウマイし。オマエはいねえし」
 
ハートを撃ち抜かれたオレはベッドに顔を伏せてバタ足をした。
 
「どした?」
「オマエ……電波か?」
「違えわ。このやり取り、うぜえ~」
「うぜえ言うな」
 
なんなのこのクール仮面ロマンチスト。
つうかホントに聞こえたの?
乙女ちゃん、こういうの弱いわ~。
 
 
画面をスクロールする。
 
バイク。
カッコいいなジョーカー。
灰谷がオレの為に探してくれた。
バイト頑張って早くおカネ返さないとな。
 
一緒に走りたくなって、だっけ。
あ~なんか顔がニヤける。
 
「ってか灰谷、このメット」
「メット?ああ、中田の兄貴がプレゼントだってさ」
「マジで。兄貴カッコいい~」
「おう、会ったらお礼言えよ」
「うん」
 
中田の兄貴が用意してくれたメットは被るとまるでモビルスーツの頭みたい見えるシャレたものだった。
 
「このメットすんげえカッコよくねえ?」
「ああ」
「これ、シャアの色じゃん」
「シャア?」
ガンダムの」
「ああ」
「ほんでこっちがザクでグリーンだろ」
「そうなの?」
「そうなのって気づいてなかったの」
「うん。まあ。メットはやっぱフルフェイスじゃないと危ねえからなって」
「そっちか!あ~中田の兄貴センスいい~」
「まあカッコいいなとは思ったけど」
「灰谷。意外と気づかねえのな」
「それどころじゃなかったんだよ」
 
あ、そういう事か……。
 
「……ワリぃ」
「いいけど」
 
 
画面をさらにスクロールする。
 
虹。
 
「灰谷」
「ん~?」
「虹な、オレも見たんだよ」
「そっか」
スマホ電源切ってたから、写真撮れなかったけど」
「あ~あれ、虹ってさ、見慣れないから一瞬なんだかわかんなくね?」
「そうそう、これなんだっけって思うよな」
「うん。言葉が遅れて来るんだ」
「んで、誰かに見せたくなるよな」
「ああ。自分一人で見てるともったいない感じ」
 
感情が動いて、言葉ができる。
心に脳に留めておきたくて。
誰かに伝えたくて。
 
 
オレは画面をスクロールして戻す。
 
灰谷からのメッセージ。
 
『真島、会いてえ』。
 
真島、会いてえ……か。
 
オレの宝物だな。
 
オレ、灰谷にありがとうって言ったっけ。
言ったか……。
 
 
「灰……」
 
灰谷は眠っていた。
スースー小さな寝息を立てて。
 
オレは灰谷の寝顔を見つめる。
ガキの頃からずっと見続けてきた男前顔。
なんだか、夏の前より男っぽくなってる気がする……。
 
無防備だな、襲っちまうぞ。
いや、しないけど。
 
 
灰谷の隣りに、チャリの後ろの特等席に、戻って来られて本当に良かった。
 
 
「ありがとな。灰谷」
 
聞こえてないだろうけどオレは灰谷にささやいた。
すると、まるで返事を返すみたいに灰谷の口がポカリと開いた。
そして、ツツーとヨダレが……。
 
ククククク。
オレは笑いを噛み殺す。
 
ウケる。
こいつウケる。
マジウケる。
 
ガキの頃からこうだった。
 
この間抜けヅラを見続けられますように。
 
オレは小さく祈った。
 
 
 
 
ん~。
 
灰谷は目を覚ました。
 
しまった。
真島と話してたのにいつの間にか眠っちまった。
 
ふわ~。
 
あくびをしながら起き上がる。
 
今、何時?
 
すでに窓の外は明るいようだった。
 
 
隣りを見れば真島はぐっすりと眠っていた。
 
本当にこいつ、寝てる時は日頃の口の悪さもなんのその、無防備で女みたいにキレイな顔してるんだよな。
 
灰谷は真島を見つめた。
 
節子の言った通り、真島は少し日に焼けたようだった。
 
あ~あ。日焼け止め塗らねえから。
 
 
これから。
オレはこいつに応えてやれるのか。
 
まあ、なんだかんだカワイく見え始めて来たのは確かだった。
 
 
「う~ん」
 
真島が寝返りを打って股の間に両腕をはさみこんだ。
 
灰谷の顔がニヤけた。
 
このポーズ。
まったく変わらねえな、こいつ。
ガキの頃から。
 
「まあ、末永くよろしく頼むぜ真島」
 
 
灰谷は真島の寝顔にささやいた。
 
 
 
 
 
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