空々と漠々 くうくうとばくばく

BL小説ブログです。。。

ナツノヒカリ 19

 

世界は止まらない。回り続ける。
ダラダラダラダラとオレの首を真綿で絞めるように続く。
 
 
7月に入って期末試験。
これさえ終わってしまえば試験休みに夏休み。
長い長い休みがやってくる。
 
いつもなら楽しいはずの休みも今年は期待できそうにない。
 
 
灰谷と明日美ちゃんは相変わらず続いていた。
 
「んでんで?どうなのよ灰谷、明日美ちゃんとはさ」
「どうって?」
「何か進展はありましたかっての」
「……別にねえよ」
「別にねえよって。なくてどうする男の子」
 
学校の休み時間に例によって佐藤が灰谷にカラミ始めた。
 
「チューとかチューとかチューとかさ」
「ネズミかチューチューうるさいぞ佐藤」
「いいから、中田はだまってろ」
「したんだろチューくらい」
「ふう」
 
灰谷はため息をついた。
 
「なんだよ、そのふうって。してねえの?できねえの?ゴム使ってねえの」
「ノーコメント」
「ノーコメント!モテるやつはすぐこれだよ。経験は共有してこそ明日に活きるわけよ」
「オマエがその経験を活かす日はいつくんのかね。一生来なかったりして~」
「うっせえ中田!おう真島、オマエはなんか聞いてんだろ。教えろよ~」
 
オレに振ってきた。
 
「まあまあ佐藤、ペーターはちゃんとお仕事してるから大丈夫だよ」
「ペーター?」
「あれ?ハイジに出てきたペーターってウシ飼いじゃなかったっけ?」
「ハイジ。アルプスのなんとか言うやつ?あれは確かヒツジ飼いじゃねえ?」
「ヤギだよヤギ」
「おっ、中田物知り博士。年の功」
「同い年だっつーの」
「まあとにかく、ペーター灰谷はアスミルクの搾乳に余年がないとよ」
 
どうだ!
 
「……搾乳」
「アスミルク。明日美のミルクでアスミルク?」
「さ……搾乳……」
「ペーター灰谷」
 
・・・。
 
 
ギャッハッハッハ。
 
 
佐藤と中田の笑いが教室内に響き渡った。
 
 
やった!!ウケた。
佐藤だけではなく普段は割とクールな中田も笑い転げた。
 
灰谷は……と見れば。
ちょっと呆れ顔。
 
「オマエら人の彼女をアスミルクだの搾乳だの。誰がペータ灰谷だ、ふざけんな」
「真島、名付けセンス神。アスミルクとペーター灰谷」
「つうか搾乳っていうのがもう……プププ」
「お~い、なんだよ中田まで。ひでえな」
 
 
その時、♪~と灰谷のスマホが鳴った。
 
「おっ、アスミルクから乳が張ってしょうがねえってLINEか、ペーター灰谷」
「殴るぞ佐藤」
「殴っちゃいや~ん。ペーター優しく絞って~」
 
ギャハハハハ。
 
 
ゲスの極みだったが、こうやってギャグにでもしないとやってけねえオレがいた。
 
バイトのシフトがカブらなくなったから、灰谷と明日美ちゃんが今どんな感じのかはわからない。
オレが知ってるのは二人が寝たことくらいだ。
 
んで、そうなった原因の一部はたぶんオレ。
明日美ちゃんをイジメたくて、"初めて”をあげちゃえば灰谷は大事にするよ、なんてそそのかして墓穴を掘った。
灰谷はオレのこと探しに来てくれたのに会えなくて、オレは……初めて会ったおっさんに処女を捧げました。
サイテー。
 
灰谷の表情からは特に今までと変わった空気は感じない。
いや……まあでもちょっと男っぽくなったかも。
端的に言えばちょっとエロい。
 
性生活の充実?
いや知らないけど。
そんなことを感じさせる。
 
 
「オマエら何見てんだよ」
「は?なんだよペーター灰谷。見てねえし」
「見てんじゃねえか」
「見たっていいだろ~」
 
灰谷はボソッとつぶやいた。
 
「搾乳依頼じゃねえからな」
 
・・・。
 
ギャッハッハ~。
 
「搾乳依頼!搾乳依頼!」
 
オレたちはまたしてもゲラゲラ笑い転げた。
 
「オマエ狙ってたべ、搾乳依頼」
「ちょっとな」
 
なんだよ、灰谷だって気に入ってんじゃん搾乳。
 
「なんだってアスミルク」
「アスミルク言うな。明日いっしょに試験勉強しないかって」
「試験勉強~?範囲違うべ」
「わかんねえやつだな佐藤。口実だろ」
「何よ。何の口実だよ中田」
「さっ……ククク……搾乳の……ギャハハ」
 
中田が腹を押さえて笑う。
 
「ダメじゃん中田、言う前に笑ってんじゃん。そこはこらえなきゃ」
「ダメだ。オレ、ツボ……ククク」
「オマエら言いたいだけだろ搾乳って」
「ペーター灰谷、搾乳に行って来い」
「ペーター言うな」
 
 
ん~バカ話はいいな。
こうしてると今までと変わらねえんだけどな。
試験勉強か。
まあ、いっしょにいたいっつうことなんだろうな。
 
 
学校帰り、灰谷はオレをいつものようにチャリで家まで送り届けてくれた。
 
「真島、週末オマエもうちで勉強……」
「行かねえ」
「わかった」
 
何回かに一回は一応、礼儀みたいに明日美ちゃんと会う時にいっしょにどうかと誘ってくる。
オレはその度に断る。
 
「んじゃな」
「おう」
 
チャリで帰っていく後ろ姿。
灰谷は大体振り返らない。
振り返らずに手だけを振る。
オレが見てるのをわかってるみたいに。
 
オレもオレだった。
すぐに家に入ればいいのに。
 
オレはここのところ、あいつの後ろ姿ばかり見ている。
 
 
 
 
 
ブログランキング参加中。よろしかったらポチッお願いします。

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ 
★読んだよ~には拍手ポチッと押して頂けると嬉しいです♪